PROJECT

祇園甲部歌舞練場に桜を植える

伝説の桜守が植える
桜で祝う祇園の春

桜は1本1本が違う、勘と経験でしかでけへん
そやからマニュアルは作れへんのや

2022年の春、美しい姿もそのままに生まれ変わった歌舞練場に帰ってくる計画の都をどりを祝福するため、歌舞練場に美しい桜の木を植えようというのが、すなわち今回のプロジェクトの趣旨。そしてその桜の木を選定し、植えていただこうとお願いしたのが、伝説の桜守として名高い京都の庭師、十六代佐野藤右衛門さんです。

佐野藤右衛門は江戸時代からの名跡。十六代は1928年生まれの92歳ですが、「雨降りと夜以外は外に出ています」と語るほどかくしゃくとして、今も仕事の第一線に立っています。「祇園にきれいな花が咲いているから、それを見に行くだけや。ほんで花代を払うてまんのや」と笑って煙に巻きますが、京都の舞はお能、そして舞楽に発する奥の深い芸術であり、千年の歴史を舞っている舞だと語るほど、祇園の文化を愛してやみません。

桜守としての仕事は祖父に当たる十四代が始めた日本全国の桜を保存する活動に端を発します。日本中の桜を調査研究し、自身の桜畑でさまざまな桜を育てるその活動は、十六代になってさらにその重要性を増しています。

桜は年によって花のつきかたも色も変わる

「山桜がどんどん減ってますねん。人間が山をほったらかしにしてるからや。山が本来の山ではない。人間は同じものばかり植えすぎる。杉も植えすぎたし、桜では人工的なソメイヨシノも増えすぎた。人間は生態系を変えて、自然然環境の破壊をしてまんねん」

彫刻家イサム・ノグチとともにパリのユネスコ本部に日本庭園を作り、ピカソ・メダルも受賞したこの世界的な庭師は、破壊されゆく日本の自然と気候の温暖化を憂うとともに、偉大な生命現象の象徴を桜の木に見ます。

「今の祇園の円山公園の桜は枝垂れの彼岸桜や。彼岸桜は条件が整えば千年残る。そやから、歌舞練場に桜を植えるからには、千年、万年残さんと」

祇園文化の聖地に幾千年も咲きほこる桜の木を植える、そのご支援をしていただけませんか。

文=太田穣  撮影=柳原美咲