PROJECT

和歌の家・冷泉家の「北の大蔵」建設

新しい土蔵で
和歌の心を守り継ぐ

プロジェクトの主旨

● 藤原定家を遠祖に持つ和歌の家・冷泉家。平安時代後期より冷泉家が大切に守り伝えてきた古典籍や古文書、年中行事にまつわる道具類などの文化遺産は、数多の戦火や天災など歴史の波をくぐり抜け、多く国宝や重要文化財に指定されています。

●これらの文化遺産は、その数、数万点以上。京都御所周辺に今も残る唯一の公家屋敷である冷泉家住宅の敷地内の土蔵に収められていますが、土蔵に入り切らないものはプレハブ倉庫に仮置せざるをえない状態でした。そこに2018年の台風が襲い、倉庫の屋根が吹き飛んでしまいました。それで新しい蔵が喫緊に必要となったのです。

●貴重な文化遺産を今後、何百年にもわたり保存し後世に伝えていくために、2020年、冷泉家は日本の風土にあった伝統的な土蔵を建設することを決断します。その工事には約2億円の資金が必要で、お一人でも多くの方々からのお力添えを必要としています。

和歌の家として800年以上もの歴史を持つ冷泉家は、百人一首でもよく知られる藤原定家やその父である俊成以来の和歌をいまに伝えています。京都御所からほど近い旧公家町に構える屋敷は、完全なかたちで現存する唯一の公家屋敷。歌道の家らしい、洗練された美しさを残しています。

屋敷の敷地内にある蔵では、平安・鎌倉時代の貴重な典籍類が大切に保管され、守り伝えられてきました。なかでも、和歌に関する収蔵品が多く、その数は数万点にものぼるそうです。藤原定家の筆による『古今和歌集』や『明月記』など、教科書でも掲載されるような著名な資料も収蔵されているとのこと。冷泉家25代目となる当主の為人氏は、これらの収蔵品を当主として継承していく責任と務めについて話してくださいました。

「御文庫や御新文庫と呼ばれる蔵には、国宝5件、重要文化財48件、点数にして1300点が収蔵されています。これは、つまり公家文化を象徴するものがそれだけたくさんあるということで、御文庫の存在を通して、気が遠くなるような長い歴史と文化のある家なのだと改めて実感させられます。また、それと同時に、これまで継承に関わってきた多くの人々の存在を思うと、必ず後世に伝えていかなければならないと考えています」。

数々の収蔵品は、冷泉家や和歌、公家の文化を伝える貴重な資料であり、日本人にとってまさに「宝」と言えるでしょう。為人氏は、今後も継承していくために、この先何十年、何百年と安全に保管できる環境、つまり蔵の整備が必要と考え、昨年から伝統的な土蔵の新築工事に着手しています。

蔵からあふれた収蔵品が管理の負担に

冷泉家には5つの土蔵があり、主に平安・鎌倉時代の典籍を収蔵する「御文庫」、江戸時代の典籍を収蔵する「御新文庫」の2つの書物蔵と、道具類を収蔵する「台所蔵」「常蔵」「角蔵」の3つの道具蔵に分かれています。もともと道具蔵は6つありましたが、そのうち3つが経年劣化で崩れてしまい、当初は行き場のなくなった収蔵品を残りの3つの道具蔵に収めていました。しかし、あまりにも収蔵品の数が多く、整理が行き届かなくなっていたため、やむなくプレハブの仮置き場に収蔵品の一部を移すことになったのです。そこを2018年に激しい台風が襲い、仮置き場としていたプレハブの屋根が強風で吹き飛ばされてしまいました。そのため、蔵の新築が早急に必要な状況となり、2020年6月から新しい「北の大蔵」の建築工事が開始されることになりました。

御文庫・御新文庫で保管されている収蔵品以外にも、江戸時代の典籍や煎茶の道具など、冷泉家の蔵にはまだ詳細な調査が行われていない資料が多く存在しています。歴史的に貴重な資料を守るためには、何より新しい蔵の整備が必要不可欠だったのです。しかし、この工事には約2億円もの資金が必要であるため、冷泉家と親交の深い京都の有識者らが呼びかけ人となり、現在も広く寄付金を募っています。

冷泉家では、冷泉流歌道と関連する年中行事を毎年季節ごとに行っていますが、それらは、宮廷文化を今に伝える貴重な行事として、収蔵品とともに冷泉家時雨亭文庫によって守り、継承されてきました。その年中行事で使用する道具も元々は蔵の中に収められていましたが、定期的に使用するため、収蔵量を超えた整理が行き届いていない蔵に戻すことができず、今は屋敷内に移して保管されています。台風でプレハブの屋根が破損してしまってからは、このように、収蔵品を細かく分けて屋敷内や別の場所に移すことで、何とかその場をしのいでいるという状況が続いています。 本来蔵で保管されるべき貴重な道具類があふれていることで、管理にも大きな負担がかかってしまっているのです。